銀行成長の条件

 株高と円安が急ピッチで進んだ昨年11月以降の「アベノミクス」相場で、3メガ銀の運用戦略は真っ二つに割れた。
 残存期間が5年以上の長めの国債を三菱UFJ、みずほの両フィナンシャルグループは買い増した。一方、三井住友フィナンシャルグループは国債保有を圧縮し、代わりに株式投資信託を買い増した。
 日銀の金融緩和への期待から、昨年11月は0・7%台だった長期金利は3月期末にかけて0・5%台に低下、債券相場は上昇した。2013年3月期の決算では、勝負に出た三菱UFJ、みずほがそれぞれ3223億円、2204億円の債券売買益を稼いだ。一方、三井住友の売買益は1138億円にとどまった。軍配はひとまず、三菱UFJ、みずほに上がった。
 もっとも“勝負”の行方はまだ分からない。4月の日銀の緩和をきっかけに長期金利は一時0・920%まで上昇、債券相場は下落に転じた。前期まで収益源だった国債を保有し続けると、損失が生じる可能性が出てきた。
 三井住友が昨年から国債の売却に動いたのは過去の苦い経験があるからだ。10年前の2003年6月、0・430%をつけた長期金利も3カ月弱で1・675%まで急騰、債券相場が急落し、含み損を抱えた。
 当時を知る三井住友の首脳は「金利上昇局面で国債を買い進んだため、後に塗炭の苦しみを味わった」と振り返る。03年3月期に1356億円の黒字だった三井住友の債券売買損益は05年3月期以降4期連続で赤字になった。今回はその教訓を踏まえ、早めの国債売却に動いた。
 三菱UFJやみずほも金利動向には神経質になっている。みずほは市場部門の幹部が参加する「長期金利上昇リスク部会」を4月末に立ち上げた。
 三菱UFJの平野信行社長が「思慮深い行動を取ることが重要だ」と強調するのは、多額の国債を保有するメガバンクが国債圧縮に一斉に動くと市場に与える影響が大きいと考えているためだ。
 48兆円の国債を持つ三菱UFJの場合、金利が0・1%上昇するだけで国債価格の下落で1500億円の評価益が吹き飛ぶ。
 これまで銀行の国債売買は国内貸し出しの収益低迷と株式の評価損を補う役割を果たしてきた。だが、今後は、膨らんだ国債の保有リスクをどう軟着陸させるかが課題になる。
日本経済新聞

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