2013年3月期決算が6年ぶりの高水準となった五大銀行グループは、14年3月期は一転して減益を見込む。
好業績の主因となった国債売買益が大きく減ると予想する。3月末の国債残高は約118兆円と12年3月末に
比べて3・7%減った。日銀の金融緩和の影響で長期金利の振れが激しくなっており、各行は金利変動リスクを
注視している。
大手銀の中でもっとも国債残高を減らしたのは三井住友フィナンシャルグループだ。昨年秋に運用方針を転換し、
1年で2兆円強減らした。宮田孝一社長は「国債市場から他の資産へシフトを進めている」と話す。金利上昇に備えて、
償還までの期間が短い国債の割合を増やし、3月末の平均残存期間は1・8年。足元はさらに短くしている。
大手銀の国債保有が急増したきっかけは08年のリーマン・ショック。貸し出しが低迷し、余った資金を国債投資
に充ててきた。都市銀行の国債保有額は5年間で3倍近くになった。だが巨額の国債保有は、金利の上昇局面では
リスクとなる。
みずほフィナンシャルグループは金利が1%上昇すると保有国債の含み損益が1000億~2000億円悪化する
という。佐藤康博社長は足元の金利上昇について「この程度なら決算に与える影響は大きくない」としている。
今後は、金利上昇につながる兆しを点検するなど国債保有のリスク管理を強化する。
銀行によってスタンスは微妙に違う。メガバンク最大の約48兆円の国債を持つ三菱UFJフィナンシャル・
グループは3月末の残高が微増した。平野信行社長は「安定的な保有者である方針には変わりない」と強調。
三井住友トラスト・ホールディングスの北村邦太郎社長も「2%を超す急激な上昇は考えていない」と話す。
金利の低下局面では含み益が生じた国債を売り収益をあげてきたが、金利が上昇し始めるとこうした手法は使えない。
三菱UFJは、今期の国債売買益が1000億円強と、前期の3300億円から大幅に減ると予想する。力を入れるの
が海外部門。米国やアジアで相次ぎ現地銀行への出資や資産買収を決めた。
みずほは、国内の成長産業への融資を強化する。前期は業績不振の一部企業向け引当金を積み増し、
不良債権処理損失が1141億円と3メガ銀で最大となった。それでも数年前に比べて低水準で、収益向上へリスクを
取る余地がある。
日本経済新聞