①信用保証協会とのつき合い方

[信用保証協会の活用]
信用保証協会とは、「信用保証協会法」に基づく公的機関です。よって、民間の金融機関ではございません。
中小企業が銀行から融資を受ける時に、信用保証協会が保証人となって、借入れを容易にすることにより、企業の育成を金融の側面から支援する公的機関です。

[保証協会保証付き融資]
保証協会保証付き融資というのは、信用保証協会が、融資案件について、銀行と同様に審査し、保証人となり、その結果、銀行により行われる融資のことを言います。
融資は銀行が行うのですが、信用保証協会が保証人となって、銀行に対して保証する形態をとります。

[銀行にとってのメリット]
銀行側からすると、融資した中小企業が倒産などの理由により、返済不能になれば、信用保証協会がその中小企業に代わり、返済をしてくれる安全な融資といえます。
但し、現在は、多くの保証については、融資額の80%までの保証となっております。

[中小企業にとってのメリット]
中小企業側からすると、銀行による貸し渋りが横行している昨今、信用保証協会からの保証を取り付けることが出来ると、融資を受け易くなります。
一般的に、中小企業は大企業に比べ、信用力が低くなりますので、多くの企業が信用保証協会保証付き融資を受けております。

[自治体とのコラボレーション]
信用保証協会と自治体とのコラボレーションによる「制度融資」があります。
自治体が地元企業育成の観点より、信用保証協会に対して、融資の斡旋、つまり融資が受けられるよう推薦をしてくれるのです。
創業間も無い企業でも融資を受けられる可能性が広がっております。
自治体ごとに内容は異なりますが、金利や保証料が低めに設定されています。

[責任共有制度の背景]
今までは、保証協会保証付き融資は、信用保証協会の審査が通れば、銀行は融資をしてくれたのです。
銀行からすれば、「信用保証協会の審査通過が前提」、なんです。それは、銀行が融資金額を100%回収できる「保証」がついていたからです。
よって、銀行内の稟議はあっても、プロパー融資の審査に比べて、はるかに緩く、形式的な審査が中心となり結局、ずさんな審査による融資事故が増えてきました。

[責任共有制度の導入]
責任共有制度の導入で、今まで100%回収できる「保証」の割合が、80%に引き下げになったのです。
銀行にとっては、20%部分は回収不能となるリスクが生じることになりました。
銀行も保証協会もダブルに審査が必要になったことにより、、融資のリスク(銀行と信用保証協会からすれば、融資金額が回収できないリスク)が分散されて、実質的には、保証協会が負うリスクが下がりますので、ある意味、より融資の保証がしやすくなるのです。

[責任共有制度による影響]
銀行でも、20%のリスクを負うことにより、従来より厳しく審査されますが、保証協会付き融資の融資額を減らさないでしょう。
なぜなら、銀行にとり、現状、一番、融資がしやすい仕組みだからです。もはや、銀行にとり、100%保証の付いたリスクの無い融資は、一部を除き無くなっただけで、銀行にとり、最も融資がしやすい仕組みである限り、各銀行がしのぎを削ることには変わらないのです。実際に、導入時とその一年前と比べても、中小企業向け融資は増えております。

[保証料について]
従来は原則として一律であった保証料率が、改定により企業の経営状況を踏まえた九区分の保証料率の体系に変更されました。
従来は信用保証協会の保証を受けるのであれば、財務内容が良好な企業でも、あるいはかなり内容の厳しい企業でも、1.35%という同じ保証料率を負担しなければなりませんでした。
新体系では、最も負担の重い保証料率は2.2%で、最高の財務内容の企業に適用される料率0.5%と比較して、1.7%の違いもございます。
たった 1.7%と思う無かれ。例えば、1,000万円5年均等返済の一般的な保証形態にて概算にて計算しても40万円相当の保証料の違いが生じるのです!

②信用保証協会の審査の実態

[どれぐらい融資がうけられるの?]
融資が受けられる金額は、企業の財務内容や事業内容や担保状況によります。
無担保での保証を受ける場合は、月商の3ヶ月程度と言われます。
信用保証協会のHP等をみますと、「無担保5,000万円まで」等、喉から手が出るくらい嬉しい表記がされていますが、実情は、月商の3ヶ月程度です

[月商の3ヶ月分の融資だけなの?]
あくまでも融資の現場での一般的な実情です。
個別の企業ごとに審査はその都度行われておりますので、それ以上の融資を受けられる企業もあれば、その逆もあります。
月商の3ヶ月分とすると、売上規模の大きい会社の方が融資金額は大きくなります。

[融資審査のポイント]
多く融資を受けられる企業のポイントとしては、
① 業績は順調に推移している。過去3年間、増収・増益を続けている。
② 月商も過去一年の間、増加している。
③ 翌期以降の業績の見通しが明るい。具体的な増収要因が次期決算に明らかである。
④ 事業計画が明確に表れており、書面にて提出されている。

[誰がいつから利用できるの?]
信用保証協会を利用できるのは、事業開始後、一年を過ぎてからです。
また、個人事業主か法人かは関係無く、現在、事業を行っている事業者が対象となり、資金使途も事業資金に限定されます。業種によっては、対象とならない業界もございます。
(創業支援制度が拡充してきましたので、創業間もない企業も利用しやすくなりました)

[制度融資はどこで申込めばいいの?]
企業の所在地の自治体、例えば、区役所や市役所の中小企業向け融資を担当している窓口に行きます。
審査の予約をして、当日、役所の担当者の面接を受けます。このような手続きを経て、借入申込書が自治体から銀行や信用金庫に回されます。
また、審査をする保証協会や銀行側としても、自治体の斡旋や推薦がある手前、他の融資より、審査が通ることが多いようです。

[保証があるから、返済が出来なくなってもいいの?]
名称からして誤解が生じ易いのですが、確かに、企業やその代表者(保証人)は、銀行への返済は、保証協会が保証しているので、代わりに返済をしてもらえます。しかし、他方で、銀行への債務が、保証協会に移行するだけで、「返済の義務自体は、企業に残るのです」
いわゆる保険とは全く違うものです。

[業績の悪い企業は難しいの?]
確かに、赤字が何期も連続している企業での融資は、審査する側としても、貸倒れの観点からして、厳しいと言わざるをえません。
しかし、当社では、そのような企業でも多くの融資調達のお手伝いをしてきました。
赤字企業でも融資が受けられる企業のポイントがございます。

[業績の悪い企業での融資審査のポイント]
① リストラ策が明確に提示されている。
例えば、役員報酬のカット、従業員の給与削減、経費の大幅削減、保有資産の見直し
② リストラ策を踏まえた、事業計画の策定。
実現可能な計画なのか
③ 銀行に財務状況を説明出来る資料を準備できる。
最新の試算表、資金繰表、毎月の売上高、予測業績表、など
④ リストラ策や事業計画や財務資料は全て、代表者が「数字で説明をする」ことです。
銀行員や信用保証協会の担当者も生身の人間です。代表者が本気で事業に取り組んでいるか
を直接聞きたいと思っています。

[取引銀行は大手都市銀行の方が信用されますよね?]
このようにおっしゃる社長さんは多いと思います。
実際に、会社案内などに、取引銀行として大手都市銀行の名前を入れたほうが見栄えがいいかもしれません。これなら、銀行の窓口に行って、預金口座を作りさえすればいいのです。

[大手都市銀行から融資を受けるには]
大手都市銀行から融資を受けて、メインバンクとなる方法はございます。
「制度融資」と呼ばれる自治体が支援する信用保証協会保証付融資を活用するのです。
これは、都道府県などの自治体が、保証料や利子負担をしてくれ、企業側としては大変経済的な制度です。自治体が大手都市銀行に対して融資を斡旋してくれるのです。

[自治体が大手都市銀行に融資を斡旋?]
最終的に融資を判断するのは信用保証協会と銀行です。しかし事前に、自治体が融資の申込み内容をチェックし、自治体と契約している中小企業診断士などが、直接の面接を実施し、審査をします。
自治体の審査を通過すれば、銀行に審査が進むのですが、対象となる銀行が、自治体の地域内にある銀行の支店となりますので、大手都市銀行も大抵含まれます。大手都市銀行からすれば、自治体からの斡旋を受けた企業でもある訳で、一見客が、直接初めて店頭に融資の申込に来られた場合と比較して、明らかにその敷居は低くなっています。

[ビジネスローンセンター]
ビジネスローンセンターとは、主に信用保証協会の保証協会保証付き融資を限定して扱う組織です。
預金業務もなければ、その他の融資の業務も行いません。
通常、銀行の○○支店とは異なり独立しており、支店と併設されているケースが多いようです。

[ビジネスローンセンターとのつきあい方]
信用保証協会融資に限定して融資を行う為、その他の銀行サービスは別の窓口になります。
信用保証協会融資に関して特化している為、その融資のみを希望する中小企業には問題ございませんので、
割り切って付き合うことが大切です。
ビジネスローンセンターは、業務内容に制限を課されている組織ですので、親密な銀行取引の関係を作っていくことは期待しない方が賢明です。

③信用保証協会の交渉の仕方

保証協会保証付き融資での銀行交渉の仕方
銀行としては、保証協会付保証の融資は、一回にできるだけ大きな金額で貸し出しをしたいと考えます。
個別企業ごとの保証残高の空き枠(まだ企業が利用できる保証金額をこう呼びます)を他の金融機関にとられることのないよう、目一杯の貸し出しをしたいと考えるものです。

「せっかく貸してくれるというのだから」と、当面の必要の無い資金まで無理に借りてはいけません。
銀行業界では、「銀行は晴れているときに、傘を貸し、雨が降ったら傘を貸さない」と言われております。
大半の中小企業にとり、本当に資金が必要な時は、銀行は貸してくれないと思った方がいいです。

保証協会保証付き融資での銀行交渉の仕方 2
企業経営者が考えるべきことは、「最も有効に信用保証協会の保証の枠をいかに活用できるか」です。
ずばり、プロパー融資をセットにしてもらうことをお願いするのです。

「保証協会付融資を2000万円借りるから、それにプロパー融資を1000万円上乗せして、合計で3,000万円の融資にしてくれませんか」というようにです。

究極の高度な交渉術です。企業の規模や財務内容にもよりますが、融資残高を増やしたい金融機関にとっては、この提案は必ずしも却下されるものではないでしょう。

保証協会保証付き融資での銀行交渉の仕方 3
プロパー融資とセットで増額申し出をするのは、銀行交渉では、相当高い交渉術です。
銀行の審査の観点からみると、保証協会保証付き融資とプロパー融資との審査基準は、全く違います。
プロパー融資の難易度が、はるかに高いので、このことを前提に準備しましょう。

財務内容での強みや、他行の支援状況など、融資の審査を受けるための材料を書面にして、内容を説明します。銀行員からの多面的な質問を事前に想定して、幅広く資料を準備しましょう。

この交渉でのメリットは、「本来、プロパー融資が受けられないであろう企業(保証協会保証付き融資しか銀行として融資しない企業)でもプロパー融資が受けられる可能性があるということです。調達手段の多様化を図ることが出来ます。